クワガタムシやカブトムシは、成虫になってからは大きくなりません。幼虫の間にどれだけ大きくなるかで羽化した時のサイズが変わります。従いまして、幼虫の期間にどれだけ栄養価の高い餌を与え、太らせられるかが、成虫になった時のサイズを決定付けることになります。
とは言え、一世代で飛躍的に大きくすることは難しく、やはり「大きくなる血統」を作っていかなければなりません。なるべく早く大きなオオクワガタを飼育したいのであれば、大きくなる血統のオオクワガタを購入するのが近道ですが、そこにはあまりロマンがありませんよね...。
大きさ云々はここではさて置き、オオクワガタの幼虫をきちんと羽化させる方法を、ぼくの経験を元に語っていきたいと思います。
まず、オオクワガタの幼虫の入手方法ですが、成虫を交尾させて産ませる場合と、オオクワガタの幼虫そのものを購入する・もらう場合があります。成虫から取れた幼虫は愛着がありますが、幼虫飼育から始めたい方は、購入で良いと思います。成虫よりかなり安く入手できるはずです。
ちなみに、カブトムシとクワガタムシの幼虫は似ていますが、よく見れば簡単に判別ができます。
写真の左側がカブトムシ、右側がクワガタムシです。
さて本題です。
オオクワガタの幼虫の飼い方は大きく分けて次の3つの方法があります。
①菌糸ビン飼育(大きく育つ/羽化不全率・死亡率UP)
②発酵マット飼育(比較的安全にそこそこ大きく育つ)
③材飼育(自然に近い個体/幼虫期間が長くなる)
3つの飼育方法を紹介する前の大前提ですが、クワガタの幼虫はどの飼育方法を選んでも、成虫に与える昆虫ゼリーや果物などの「餌」を別途与える必要はありません。棲み処自体が餌になります。彼らにとってはお菓子の家みたいなものですね(笑)と言うことは、当然棲み処を幼虫が食べられるものにしてあげなくてはなりません。成虫のようにどんな棲み処でも良いというわけにはいきません。
冒頭でも述べましたが、クワガタは成虫になってからは大きくなりません。幼虫の期間にどれだけ大きくなれるかで成虫になった時の大きさが変わってきます。従って、大きなクワガタを飼育したければ、幼虫の期間にクワガタにとって栄養のある餌を与え、できるだけ大きくしなければなりません。
※当ショップでは昨今、サイズの小さなオスも人気があります。
※当サイトのどのページも、温室やエアコンによる温度管理はせずに常温で飼育した場合を前提に解説しております。
まずは、オオクワガタの幼虫飼育において主流と言える菌糸ビン飼育についてお話します。
菌糸ビンは、その名の通り、菌糸を利用した飼育方法です。オオクワガタの幼虫は、キノコの菌糸が充分に回った朽ち木を餌にして大きくなります。シイタケ栽培後のほだ木を産卵材として使用するのも、その理由からです。このことに着目し、元々はキノコの栽培に使用する菌糸ビンを転用し、クワガタの幼虫飼育に利用するようになったようです。これほど密度の濃い菌糸が回ったほだ木はなかなか自然界では存在しにくく、菌糸ビンでの飼育はオオクワガタを容易に大きく育てることができます。
オオクワガタに有益な菌糸は、ヒラタケかオオヒラタケです。
上掲写真は、菌糸がよく回った朽ち木のフレーク、つまり菌糸ビンです。
菌糸ビンを自作するのはかなりハードルが高いので、信頼できるショップから購入しましょう。
値段はピンキリですので、試しながらお財布と相談して下さい。
プリンカップサイズ、800cc、1100cc、1400ccなど、最近では大きさに合わせて購入できるように、バリエーションも豊富です。
◆オオクワガタのメスなら800ccでも羽化します。
◆オスは小型(60mm程度まで)で800cc、中型(60mm~70mm程度)で1100cc、大型(70mm以上)には1400ccが良いでしょう(あくまでも目安です)。
小さい容器に入れていると、大きくなりませんので、大きく育てたい場合は大き目のものを選んで幼虫を入れて下さい。
※容量は同じでも、縦長の容器では羽化不全になる可能性も高くなりますので(オオクワガタは横向きに蛹になります)、クワガタムシは縦よりも横が長い容器で飼育しましょう。
菌糸ビンを買って蓋を開けると、下記左側の写真のように上部にも菌が回っておりますので、右側の写真のように、スプーンか何かで取り除いて下さい。
ぼくはなるべく幼虫の観察をしたいので、透明の容器に入った菌糸ビンを使用し、下記の写真のように“端っこ”に幼虫を投入するようにしています。もちろん、側面に居座って必ず観察ができるというわけではありませんが、真ん中に入れてしまうよりは高確率で観察ができると思います。
※記事のために、普段は菌糸ビンに入れないサイズの幼虫を使用しています(後述)。
後は幼虫を入れたら勝手に潜っていきますので、周囲の菌糸オガ粉(もしくは産卵木から取り出した際に、幼虫付近にあった食痕のカス)を上から掛けてあげ、蓋を閉めて暗くて静かな温かい場所へ置いておきましょう。管理温度によってはキノコが時々生えてきますが、昆虫にも人間にも害はありませんので、取って捨てて下さい。害は無いですが、放置しているとキノコに菌糸ビンの養分を取られて勿体無いです!!
↓多数飼育している場合は、ラベルを貼って個体管理をします。
さて、幼虫を菌糸ビンに入れるタイミングですが、ぼくの場合は何となく次のように決めています。あくまでもぼくの基準です。
①孵化して間もない初齢幼虫は、菌糸ビンには入れません。と言うより、ぼくの場合は発酵マット飼育がメインですし、産卵木を取り出してから1ヶ月は放置するので、必然的に産まれたてを菌糸ビルに入れる機会がありません。
少しでも大きく育てたい場合は、早い段階で菌糸ビンに入れた方が良いと思いますが、もう少しだけ育ってからにした方が良いかもしれません。要は、小さな幼虫が菌糸に負けて巻かれなければ良いので、産まれたてで菌糸ビンに入れても、菌糸がすくすくと育たない温度で管理できれば全く問題無いと思います。実際、「なるべく早く菌糸を食べさせたい」ということで、プリンカップの菌糸に入れているブリーダーはたくさんいらっしゃいます。
②1度目の脱皮を終え、ある程度育った2齢幼虫。餌をたくさん食べる時期ですので、菌糸ビンに入れるのはこのタイミングが最も安全かと思います。
こちらの写真は、初齢幼虫から2齢幼虫に脱皮した直後です。身体が透明に近く、お尻の方には脱皮した皮をまだ完全には脱げ切れていません。
③2度目の脱皮を終えた3齢幼虫(終齢)。この時期に1回目の菌糸ビンへ入れるのは遅いと思いますが、もちろん大丈夫です。
大きくしたいのであれば、2齢幼虫の初期の段階で菌糸ビン飼育にしておきましょう。
幼虫を菌糸ビンへ入れてしばらくすると、写真のような食痕が見られるようになります。幼虫が元気に食い進んでいる証拠です。
この食痕が7~8割ぐらいになり、菌糸がほぼなくなって茶色いオガ屑とフンだらけになったら菌糸ビンの交換時期です。食痕の進行具合はオスとメスでも違いますし、個体差があるので一概には言えませんが、だいたい3か月程度でしょうか。2回の菌糸ビン交換、合計3本で羽化が目安です。オスの2本目以降は1400ccほどがオススメです。
交換した後の古い菌糸のカスは、カブトムシの産卵や幼虫飼育にも使用できますので、残しておくと良いです。「産卵もさせないしカブトムシも飼わない!」という方は、「燃えるゴミ」で捨てて下さい。
※オオクワガタの蛹から成虫への過程については、このページの末項「5. 蛹から羽化へ」に記載しております。
冒頭でも少し触れましたが、菌糸ビンでの飼育は若干リスクを伴います。写真の蛹は菌糸ビン飼育をしていましたが、死亡してしまいました。羽化直前の蛹は部分的に黒く(こげ茶色)なってきますが、この蛹は全身真っ黒になっていることが判ります。この場合、死亡しております。
それから、菌糸ビンはある一定の環境でキノコが生えて来ますので取り除いて下さい。次の写真は、菌糸が回り始めたので天井を掘りました。
次の写真は完全に菌糸が侵入して来ましたので救助しました。この場合は人工蛹室が効果を発揮します。
菌糸ビンでの飼育は、定期的にチェックができる前提でおこなって下さい。多数飼育していると面倒ではありますが、無事に羽化すれば、菌糸ビン飼育では大きな個体が得られるでしょう。次の写真は2021年5月に菌糸ビン飼育を経て羽化した大型個体のオスです。撮影時には84.5mmでしたが、身体が出来上がって来るにつれて縮みます。
そして次の写真は、2022年5月に菌糸ビン飼育を経て羽化した大型個体のメスです(55.8mmでした)。
※「発酵マット」に関する当HPの前提
クヌギ粉砕マットやコナラの粉砕マット等、椎茸栽培後のホダ木を粉砕しただけの、いわゆる昆虫マットを「未発酵マット」としています。正確には、椎茸の菌によって一度発酵したものがホダ木ですので、「未発酵マット」ではなく「一次発酵マット」とする方が正しいかもしれませんが、カブトムシやクワガタムシの飼育で「生木」が出てくることは皆無ですので、当HPは添加剤を加えて人為的に発酵させたものと対比させるため、あえて解り易く「未発酵マット」としております。
発酵マットによるオオクワガタの幼虫飼育をご紹介します。「マット」とは、木を細かく粉砕したもののことで、それを発酵させたものを「発酵マット」と呼んでいます。カブトムシやクワガタムシの幼虫は広葉樹(クヌギやナラ等)でしか育ちませんので、「マット」は狭義に「広葉樹マット」を示していることがほとんどです。
※上掲写真は一斉に蛹化したオオクワガタのオス。
成虫の管理飼育用等に針葉樹も使用されますが、広葉樹のマットに対して「針葉樹マット」と呼ばれています。
ホームセンターで売っている安価なマットは、椎茸栽培後のクヌギやナラ等の広葉樹を単に粉砕しただけ(粉砕しただけということは無いかもしれませんが)のもので、発酵マットに対して「未発酵マット」と呼ばれています。
<未発酵マットの例>
【用意するもの】
①広葉樹発酵マット
②水(水分調整がしてある発酵マットであれば不要)
③飼育ケース
④すりこぎ棒(もしくは類似のもの)
⑤キッチンペーパーや新聞紙
①広葉樹発酵マット
発酵マットは市販されているものを使えば良いですが、ショップによって独自の製法があるため金額はピンキリです。また、ショップの発酵マットは「カブトムシに適した発酵具合のもの」、「クワガタムシに適した発酵具合のもの」、それ以上に「特定の種類に適した発酵マット」など様々ですので、飼育する幼虫に合わせて選別して下さい。
いずれにしても未発酵のものよりは確実に高価ですので、未発酵マットから発酵マットを自分で作る方法もあります。
②水
購入した発酵マットは水分調整をすでにしてくれているものも多いですが、自身で水分を含ませなければならない場合は、その商品に指示された分量で加水します。ぼくは水溶性のカルキ抜きを入れ、水道水の塩素を飛ばしてから使用しています(カルキ抜きはぼくの願掛けで、特に必須というわけではありません)。
水分量の目安でよく言われるのが、「軽く握ってマットがダマになり、指で軽く押すとボロッと崩れる程度」です。ギュッと握った時に水が滴り落ちると水分過多と言えます。自作の発酵マットはすでに水分を含んでいることになりますので、そのまま使用して大丈夫です。
③飼育ケース
マットを入れて幼虫を投入する入れ物ですが、はっきり言ってホームセンター等で見掛ける昆虫専用のケースは不要です。高いです。今は100均で充分すぎるほどのものが買えます。
オオクワガタの幼虫であれば、大きなオスでも1,500ccで充分羽化まで持っていけます(もちろん餌交換は必要です)。
メスや小さめのオスであれば800ccでも羽化します。と言うより、幼虫はケースが小さければ大きくなりません。環境に適したサイズまでの成長で止めるようです。大きな個体を作出したいのであれば、大きめのケースで飼育しましょう。
※幼虫の成長度合いは餌や環境によって大きく変化しますので、大きいケースに入れたからと言って必ずしも大きくなるわけではありません。
オオクワガタは横になって蛹になるため、縦長ではなく横長のケースを購入しましょう(日本のカブトムシは縦に蛹になりますので、縦長のケースを使用します)。
100均のケースは本当にたくさんあるため、好きなものを選んでOKです。観察を楽しみたいのであればガラスのケース、安全性や軽さを考えればプラスティックのケースでしょうか。どちらにしても、空気穴が開けられそうな蓋のものを選んで下さい。
私はアイスピックの先をコンロの火で高温にし、蓋を溶かして小さな空気穴を5~8つほど開けておきます。
※くれぐれも火の取り扱いにはご注意下さい!!
④すりこぎ棒(もしくは類似のもの)
飼育ケースに発酵マットを詰めていきます。飼育ケースにマットを入れて、すりこぎ棒のようなもので押してケース底から順次固めていって下さい。ケースの7~8割ぐらいマットが入ればOKです。あまり入れ過ぎると、幼虫が動き回って蓋を開けてしまったり、ガリガリと噛んだりします。
次の写真ぐらいの深さで充分です↓
準備が整えば、幼虫を投入しましょう。幼虫が潜り易いようにマット上部に穴を開けてあげると良いです。ぼくの場合は、菌糸ビンの項目でも述べましたが、なるべく幼虫の観察をしたいので、下記の写真のように“端っこ”に幼虫を投入するようにしています(下記の写真で、黄色く囲った箇所)。もちろん、側面に居座って必ず観察ができるというわけではありませんが、真ん中に入れてしまうよりは高確率で観察ができると思います。
幼虫を入れる際は、その幼虫がそれまでに暮らしていた産卵木やマットのかけらに加えて、幼虫自身の糞も少し一緒に入れてあげましょう。環境が急に変わりますので、少しでもストレスを抑えてあげたいですね。
⑤キッチンペーパーや新聞紙
最後の仕上げです。「あとは蓋をするだけ」という段階に来ました。実は、これがとても重要な作業です。カブトムシ飼育やクワガタムシの飼育にはコバエが付き物です。このコバエをシャットアウトしましょう!ケースと蓋の間にキッチンペーパーや新聞紙を挟み、コバエの侵入を防ぎます。
キッチンペーパーを挟み込む場合、だいたい2層になっているので、私は1層分のみ飼育ケースと蓋の間に挟み込んでいます。酸素がよく通り経済的(笑)、かつコバエの侵入を防ぐことができます。但し、「2層×1枚」から「1層×2枚」に割く際、上手くいかずに小さな穴が空いてしまうことがよくあるので注意して下さい(経験上、元々穴が空きにくいものと、すぐに穴が空いてしまうものがあり、メーカーによりけりな気がします)。
発酵マット飼育は、菌糸ビン飼育に比べて幼虫がどれぐらい食べたかが判断しにくいので、3か月程度を目安にマットの交換をしてあげて下さい。終齢幼虫のフン(↓1枚目の写真)はすぐに見分けが付きますので、目安としてフンが目立って来たら交換するという方法でも良いかと思います。
※交換した古いマットは、カブトムシの産卵や幼虫飼育、マットに産卵するクワガタ(ヒラタ・ホソアカ等々)の産卵や幼虫飼育、そして成虫管理用のマットとして充分使えますので、ぼくは必ず45リットルほどのゴミ袋にまとめてストックしております。かなりのコスト削減になります。
※オオクワガタの蛹から成虫への過程については、このページの末項「5. 蛹から羽化へ」に記載しております。
※注意事項※
オオクワガタの幼虫は、カブトムシのように腐葉土で飼育する方法は適しません。自然界のオオクワガタは、キノコの菌によって白枯れした広葉樹そのものに産卵し、幼虫もそこで羽化まで育ちます。それに対し、カブトムシの産卵場所は多岐に亘り、ボロボロに朽ちた木の中に産むこともあれば、広葉樹の腐葉土、熟成した牛糞の中などに産むこともあります。幼虫の食性が若干異なるため、飼育時にもそれぞれに適した環境を作ってあげなくてはなりません。
菌糸ビン飼育が主流になって以来、めっきり材飼育をする人は減ってきています。羽化までの期間が長くなる点(約2年)、成長の過程が確認できない点(材の中に幼虫を投入するため)、菌糸ビンで簡単に大きい個体が作出できる点などの理由からです。ですが、材飼育は最も自然に近い形の飼育方法であり、一般的にとても美しい成虫になると言われています。羽化不全も少ないようです。
私は運良く義母の実家から、一般に売られている産卵木よりもかなり大きな廃ほだ木をもらえるので、材飼育にも挑戦しております。
【用意するもの】
①飼育材(一般に売られている産卵木でOK)
②水
③材を入れるケース
④キッチンペーパーや新聞紙
バケツか何かに水を満杯にし、産卵木を丸々浸して小一時間ほど放置します。その後、産卵木を取り出し、日陰で半日ほど干しましょう。変な虫が付くと嫌なので、ぼくの場合、産卵木をキッチンペーパーで巻き、新聞紙を何層か敷いたダンボールの上で“室内で”干しています。
準備ができれば、材にドリルか何かで穴を開け、幼虫を投入します。穴の大きさは幼虫の大きさに合わせて下さい。投入したら勝手に材へ潜っていくので、潜ったことを確認したら、ケースに材ごと入れて管理をします。
③材を入れるケース
材を入れるケースは、材の大きさに合わせて選びます。羽化まで2年ほどそのままにしたい場合、幼虫を入れた材の他に同じような材を一緒に入れておけば、投入した材がなくなってきたら自分で勝手に隣の材へ移動してくれます。
従って、飼育スペースに余裕があり、材の交換が面倒だと思う方は、大きいケースに追加で1~2本の材を入れておけば年単位で放置が可能です。
写真の材は、幼虫が木を渡り歩くことを想定しているので木の皮を剥いでいますが、材交換をするつもりで1本管理をする場合は、乾燥を防ぐためにも基本的に剥ぐ必要はありません。
※オオクワガタの蛹から成虫への過程については、このページの末項「5. 蛹から羽化へ」に記載しております。
オオクワガタの幼虫は、終齢(3齢)幼虫になるとオスメスの判別が可能です。頭や身体の大きさでの推測もある程度は可能ですが、最近のオオクワガタは血統や環境次第でメスでもかなり大型化しているので、確実ではありません。
ぼくはいつも1回目の餌交換の際にオスメスを判別するのですが(9月上旬頃までに孵化した幼虫でしたらほぼ終齢幼虫になっています)、その方法は卵巣の目視です。
下の幼虫の写真を見てみると、お尻の少し上の方にオレンジ色の内臓が透けているのが分かるかと思います。これが卵巣です。写真では判りづらいですが、実物は結構ハッキリ見えるのですぐ分かると思います。
この子はメスですね。大型化することで有名な『能勢YG』血統ですので、発酵マット飼育のメスでもここまで大きくなってくれます。
他の個体で例を挙げてみます。
その一方で、下の写真を見て頂くと(少し見にくくて申し訳ないのですが・・・)、メスの幼虫とは異なり卵巣が確認できません。この3頭はオスだと推測できます。
※卵巣が見えにくい場合もありますので100%ではありませんが、頭や身体の大きさと総合的に判断してもらえれば、かなりの確率で雌雄同定ができるはずです。
オオクワガタの孵化から羽化までの期間は、孵化した時期や飼育方法によって大きく差が出ますが、菌糸ビン飼育や発酵マット飼育では約10ヶ月程度です(1年1化型)。
上掲写真は、同じ親虫から産まれた2頭の幼虫を3月末に撮影したものですが、左が前年7月に孵化した個体、右が同10月に孵化した個体です。左の大きい個体は、前年の冬眠開始までに終齢(3齢)になることができ、右の小さい個体は若齢(2齢初期)で越冬をした個体です。
最後の餌(菌糸ビンor発酵マット)交換は4月中旬までには完了させておいて下さい。5月初旬から中旬になると「前蛹」(ぜんよう)といって、蛹室を作って蛹化の準備をする大事な時期に入ります。
蛹室を作るタイミングは環境や個体差によってズレがありますので、3月中に交換しておくと心配がないと思います。
前蛹は幼虫の身体全体が黄色くなり、それまでのピチピチ感からブヨブヨ感が出て来てほぼ動かなくなります。死んだわけではありませんので、触らずに放置してあげて下さい。クワガタの幼虫は死ねば真っ黒になりますので、慌てて出してしまわないようにして下さい。蛹室を作れず、羽化不全の原因となってしまう確率が高くなります。
蛹室を作る際、表面に幼虫がよく出て来ますが、最終的に潜って行けば大丈夫でしょう。時々、↓写真のように表面で前蛹になってしまう個体がおります。
前蛹になった場所が蛹室に近い形状をしていればそのままでも良いですが、明らかに表面の平らな場所で前蛹になってしまった場合は、人工蛹室へ移してあげて下さい(1枚目の写真の個体以外は人工蛹室に移した方がよさそうです)。
ぼくの経験ですが、飼育場所の乾燥(飼育容器内の水分量が少ない)で蛹室を作るのに充分な水分が用意できない場合や、餌が適さない場合(充分に糞を出せない)に、表面へ出て来て蛹になっているような気がします。あくまでも推測ですが・・・。蛹化する時にマットの表面に出てくることはよくあることで、様々な理由が考えられると言われており、理由を確定するのは難しいようです。
写真のように、ガラス瓶ケース等の側面や底面に蛹室を作ることが多いですが、その際、マットを圧し潰したように変色するので、姿は見えなくても「そろそろ蛹になる」もしくは「蛹になった」という判断をする材料にもなります。
ちなみに、蛹室は簡単には崩れないようしっかりと固められています(下記写真はメタリフェルホソアカクワガタの♀です)。
前蛹の期間はおよそ10日間で、その後に蛹になります。
前蛹から蛹になることを「蛹化(ようか)」と言いますが、その一部始終を倍速で撮影しましたのでご覧下さい。
羽化に比べて蛹化はあまり失敗がないのですが、次の動画のようにたまに下手な個体もいます。蛹化の時間が長く、大あごがズレ、左の内翅も正常の位置にありません・・・。きちんと羽化できるかが心配です。
次の写真は、1枚目から《蛹化直後》→《蛹化後数日》→《もうすぐ羽化》→《羽化直前》の様子です。蛹化直後は宝石のようで非常に綺麗です。
オオクワガタの蛹の期間はおよそ20日間で、その後に羽化します。羽化直前の蛹はかなり濃い色になり、羽化直後は身体が白く、数日が経過すると我々がよく知るオオクワガタの色に落ち着いて来ます。
羽化してもしばらくは地上に出て来ませんが、心配は要りません。必要な時期が来れば自ら出て来ます。念のために昆虫ゼリーをケースに入れてあげて下さい。
これまで、オオクワガタの幼虫飼育を3つの方法でご紹介してきました。ご自身のスタイル、コスト面、環境に合わせてオオクワガタの飼育を楽しんで下さい。
※絶対的な順守事項※
一度飼育した昆虫は絶対に自然に放つことはせず(国産・外国産に拘わらず!)、天寿を全うするまで責任を持って育てて下さい。もしくは、里親を探して下さい。放虫は法律に抵触します。