メタリフェルホソアカクワガタの幼虫は、専ら発酵マットで飼育します。大きな個体を作出したい場合は、20℃~23℃辺りで温度管理ができればベストですが、ぼくは冬場以外は常温で管理しています。冬場は自作の簡易温室程度でやり過ごしています。それでもオスは70mmオーバー、メスは最大29mmが羽化しています。小さな個体もほとんど羽化しておりませんので、こだわりが無いのであれば、特に温度管理は不要かもしれません(あくまでも私見ですし、冬場は温度管理が必要です)。
①飼育ケース
まず、飼育ケースですが、オスメス共に800cc程度のものであれば羽化まで持って行けます。メスは500cc程度でもOKです。大きなオスを作出したい場合は、縦よりも横に広いケースで、1,000ccもあれば充分かと思います。
ちなみに、写真のケースは100均で購入した800ccのプラスティックケースです(実物は写真よりももっと縦長な印象です)。ぼくはいつもこれを使用しています。もちろん、100均で売られている下記のようなケースでももちろんOKです。
100均のケースは本当にたくさんあるため、好きなものを選んでOKです。観察を楽しみたいのであればガラスのケース、安全性や軽さを考えればプラスティックのケースでしょうか。どちらにしても、空気穴が開けられそうな蓋のものを選んで下さい。
ぼくはアイスピックの先をコンロの火で高温にし、蓋を溶かして小さな空気穴を5~8つほど開けておきます。
※くれぐれも火の取り扱いにはご注意下さい!!
②広葉樹発酵マット
メタリフェルホソアカクワガタの幼虫飼育には発酵マットを使用します。ポイントは、オオクワガタの幼虫をマット飼育する時に使用するような二次発酵マットより、カブトムシを飼育する際に使用する完熟発酵マットを選ぶことです。「クワガタマット」と書かれているものよりも、「カブトマット」と書かれたマットを選ぶと良い結果が得られます。
③水
購入した発酵マットは水分調整をすでにしてくれているものも多いですが、自身で水分を含ませなければならない場合は、その商品に指示された分量で加水します。ぼくは水溶性のカルキ抜きを入れ、水道水の塩素を飛ばしてから使用しています(カルキ抜きはぼくの願掛けで、特に必須というわけではありません)。
水分量の目安でよく言われるのが、「軽く握ってマットがダマになり、指で軽く押すとボロッと崩れる程度」です。自作の発酵マットはすでに水分を含んでいることになりますので、そのまま使用して大丈夫です。
④すりこぎ棒(もしくは類似のもの)
飼育ケースに発酵マットを詰めていきます。飼育ケースにマットを入れて、すりこぎ棒のようなもので押してケース底から順次固めていって下さい。ケースの7~8割ぐらいマットが入ればOKです。あまり入れ過ぎると、幼虫が動き回って蓋を開けてしまったり、ガリガリと噛んだりします。
次の写真ぐらいの深さで充分です↓
準備が整えば、幼虫を投入しましょう。幼虫が潜り易いようにマット上部に穴を開けてあげると良いです。ぼくの場合は、なるべく幼虫の観察をしたいので、下記の写真のように“端っこ”に幼虫を投入するようにしています(下記の写真で、黄色く囲った箇所)。もちろん、側面に居座って必ず観察ができるというわけではありませんが、真ん中に入れてしまうよりは高確率で観察ができると思います。
孵化直後のメタリフェルホソアカクワガタの幼虫はめちゃくちゃ小さいので、身長に慎重に扱って下さい。その幼虫がそれまでに暮らしていた産卵木やマットの欠片に加えて、幼虫自身の糞も少し一緒に入れてあげましょう。環境が急に変わりますので、少しでもストレスを抑えてあげたいですね。
⑤キッチンペーパーや新聞紙
最後の仕上げです。「あとは蓋をするだけ」という段階に来ました。実は、これがとても重要な作業です。カブトムシ飼育やクワガタムシの飼育にはコバエが付き物です。このコバエをシャットアウトしましょう!ケースと蓋の間にキッチンペーパーや新聞紙を挟み、コバエの侵入を防ぎます。
キッチンペーパーを挟み込む場合、だいたい2層になっているので、私は1層分のみ飼育ケースと蓋の間に挟み込んでいます。酸素がよく通り経済的(笑)、かつコバエの侵入を防ぐことができます。但し、「2層×1枚」から「1層×2枚」に割く際、上手くいかずに小さな穴が空いてしまうことがよくあるので注意して下さい(経験上、元々穴が空きにくいものと、すぐに穴が空いてしまうものがあり、メーカーによりけりな気がします)。
発酵マット飼育は、幼虫がどれぐらい食べたかが判断しにくいので、3か月程度を目安にマットの交換をしてあげて下さい。メスの幼虫については、特にマット交換は必要ありません。マット交換無しで羽化まで持って行けます。
オスの幼虫のマット交換の目安は、フンが目立って来たらで良いと思います。写真はオオクワガタのフンですが、同じような形状をしています。
飼育ケースの大きさにも因りますが、オスも1回のマット交換で羽化まで持って行けるでしょう。
※交換した古いマットは、カブトムシの産卵や幼虫飼育、そして成虫管理用のマットとして充分使えますので、ぼくは必ず45リットルほどのゴミ袋にまとめてストックしております。かなりのコスト削減になります。
メタリフェルホソアカクワガタの孵化から羽化までの期間は、オスで8ヶ月~10ヶ月程度、メスで6ヶ月~8ヶ月程度です。飼育温度にもよりますが、ぼくの飼育下では上記が目安です。
蛹になる前には、「前蛹」(ぜんよう)と呼ばれる、蛹室を作って蛹化の準備をする大事な時期に入ります。
ぼくのカメラの性能が悪く、写真では少し判り難いですが、前蛹は、幼虫の身体全体が黄色くなり、それまでのピチピチ感からブヨブヨ感が出て来てほぼ動かなくなります。死んだわけではありませんので、触らずに放置してあげて下さい。クワガタの幼虫は死ねば真っ黒になりますので、慌てて出してしまわないようにして下さい。蛹室を作れず、羽化不全になる確率が高くなります。
蛹室を作るタイミングは環境や個体差によってズレがありますので、オスに関しては幼虫の身体が白いうちに最後のマット交換をしておいて下さい。
蛹室を作る際、表面に幼虫がよく出て来ますが、最終的に潜って行けば大丈夫でしょう。時々、次の写真のように表面で蛹になってしまう個体がおります。
こうなった時は、人工蛹室に移します。
ぼくの経験ですが、飼育場所の乾燥(飼育容器内の水分量が少ない)で蛹室を作るのに充分な水分が用意できない場合や、餌が適さない場合(充分に糞を出せない)に、表面へ出て来て蛹になっているような気がします。あくまでも推測ですし、蛹化する時にマットの表面に出てくることはよくあることで、様々な理由が考えられると言われており、理由を確定するのは難しいようです。
前蛹の期間はおよそ10日間で、その後に蛹になります。写真のように、ガラス瓶ケース等の側面や底面に蛹室を作ることが多いですが、その際、マットを圧し潰したように変色するので、姿は見えなくても「そろそろ蛹になる」もしくは「蛹になった」という判断をする材料にもなります。ちなみに、蛹室は簡単には崩れないようしっかりと固められています。
次の写真のうち、最初の2枚はブラック系のメス、最後の4枚はパープル系のメスです(写真では判りにくいですが、光が当たると色がはっきりします)。
前蛹から蛹になることを「蛹化(ようか)」と言いますが、その一部始終を倍速で撮影しましたのでご覧下さい。
蛹の期間はおよそ20日間で、その後に羽化します。羽化直前の蛹はかなり濃い色になり、オスの大顎の形が透けて見えるぐらいの色になって来ます。
羽化直後は身体が白く、数日が経過すると成虫本来の色に落ち着いて来ます。
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羽化してもしばらくは地上に出て来ませんが、心配は要りません。必要な時期が来れば自ら出て来ます。念のために昆虫ゼリーをケースに入れてあげて下さい。
※絶対的な順守事項※
一度飼育した昆虫は絶対に自然に放つことはせず(国産・外国産に拘わらず!)、天寿を全うするまで責任を持って育てて下さい。もしくは、里親を探して下さい。放虫は法律に抵触します。